LEGASiP実証実験事例
多目的係留気球 ComBalloonTM
(株)垂直索道 Nov 1, 2016
ComBalloonTM1はヘリウムバルーンと、ComTetherTM係留索により構成される多目的係留気球です。ComBalloonTMバルーンは流体シュミレーションを経たうえで3次元CADを用いて専用設計されており、球形のものに比べて、抗力(風から受ける影響)が最大で22%まで低減しています。ComTetherTM係留索は、複数のCat.5 ネットワークケーブルを内包するスーパー繊維(パラ系 アラミド繊維と超高分子量ポリエチレン)でできたロープです。Cat.5 ネットワークケーブルを内包し、地上とバルーンの間で100MbpsでのIP通信が行え、PoE2を用いた電源供給が可能です。
標準の掲揚高さ3は 30~50mで、4.9GHz帯を使用する固定無線アクセス4による10Mbps以上のブロードバンド通信機能を持っているため、ネットワークインターフェースを持つ様々な入出力装置を組み合わせることにより、多様な用途に応用することが出来る、上空プラットフォームです。
システムは10m四方の開けた作業場所があれば2~3名により1時間程度で掲揚が行え、雨天を含めて72時間の連続掲揚5が可能です。災害時/イベント時の自営の通信インフラとして使用すれば、以下のようなサービスの提供が可能です。
- テザーに取付けたアクセス装置による公衆無線LANサービス提供
- 気象観測やテレメトリー機器、IPカメラなどのデータ伝送と監視や記録
- IP電話機を用い、誰でも一般的な電話機と同じように使える音声通話(テレビ電話や会議システムも)
またドローンでは難しい重い機材の長時間掲揚や、連続した通信と電源の供給により、以下のような応用が可能6です。
- カメラによる映像取得 : ジンバルやズームレンズを備えた4k以上の高画質カメラやマルチスペクトルカメラとネットワーク伝送装置による上空からの撮影と、ネットワークを介した伝送、録画
- スピーカーによる音声放送 : バルーンに設置したIPスピーカーで、半径500m(静穏時)の範囲へのネットワーク経由の音声や防災無線の放送
- 高輝度LEDによるサイネージ : 単純なバルーン全体の発光色変化や、マトリクス状のLED電光掲示板による文字/記号メッセージの掲示
ComBalloonTM 小型版(運用試験中)
- 全長7.9m、直径3.2m、運用高度は30m、風速上限は10m/s
- 追加ペイロードは5kgまで、上空電源はPoEにより15.4Wが2~4系統、システム全体の消費電力は最大60W7
- 固定無線アクセスの通信範囲は半径5km(無指向性ダイポールアンテナ)
ComBalloonTM 中型版(開発中)
- 全長9.4m、直径3.8m、運用高度は50m、風速上限は15m/s(開発目標)
- 追加ペイロードは10kgまで、上空電源はPoEにより15.4Wが4~8系統、システム全体の消費電力は最大120W
- 固定無線アクセスの通信範囲は半径10km(複数の指向性アンテナ)
ComBalloonTM 大型版(企画中)
- 全長11.0m、直径4.5m、運用高度は300m、風速上限は20m/s
- 追加ペイロードは10kgまで、固定無線アクセスの通信距離は半径20km(指向性アンテナと能動ジンバル)
- 連続運用2週間、全自動ワインダー(展開、引下げを自動/手動で実施)装備
- ComBalloonとComTether、並びに一部の資機材については特許出願中です
- PoE:PoweronEtherネットワークケーブルを介した電力伝送技術(IEEE802.3af)
- 航空障害灯/昼間障害標識の設置などに関する実施要領における標識の設置対象物件高さは60m以下(一部地域を除く)です
- FWA:FixedWirelessAccessを使用し、運用には市区町村防災無線従事者と同様な第三級陸上特殊無線技士の免許が必要です
- ヘリウムガス追加充填により長期の連続掲揚が可能で、2週間程度運用できるガスバリア性の高い素材のバルーンも開発中です
- 機材は防水措置がなされていることが必要です
- 中断のないサービス提供のためには、発電機とUPSを組み合わせた連続電源供給の仕組みが必要です